研究開発委員会の活動、「日本の祭」「日本の正月」「和菓子」「おもてなし」「エコロジー」について、それぞれのテーマに対応した研究活動の記録を、連絡事務局発行文書を引用しながら以下に紐解きます。
研究開発委員会主催の最初の研究会は「祇園祭」がテーマでした。その研究会への参加を呼び掛ける連絡事務局発の案内文は、実に力のこもった内容です。その文書から、当時のVMD研究に寄せる、意気込みの強さがひしひしと伝わってきます。
研究会は1987年8月20日六本木のアクシスで開催されました。
案内文は下記の通りでした。
人が集まる。人を集める。
祇園祭3年のビジュアルデータ特別公開と研究。
賑わいと感動のエッセンス、マルチスライドを上映。
あなたがその場に居ても触れることのむずかしい祭のディテール。人々を魅了し続ける伝統の祭りのデザインシステム。祇園祭と展示デザインを調査することで始まった武蔵野美術大学空間演出デザイン学科のプロジェクトは、いま現代的な意味があまりにも大きいことに気づきます。そこには感動の源泉と、私達が希求してやまぬ賑わいの環境づくり、イベントの創造、VMD理論の日本的な構築を目指す上での知恵やノウハウのための貴重なヒントと情報があるようです。 会場では、コンピューター制御の4台のプロジェクターと音響連動のマルチスライドを約20分間上映。これは同大学の3年間にわたる徹底取材の記録で、今回日本ビジュアルマーチャンダイジング協会のために特に公開していただきます。解説はこの調査記録の現場でディレクションをされた同大学教授でVMD協会の会員でもある森豪男さんにお願いしました。また今年の祇園祭に京都へ参集した会員の方々からも、賑わいのプロデュースの視点で興味溢れるお話しを聞くことができるでしょう。
マルチスライド上映のため禁煙の涼しい会場で、高品位な情報と創造性刺激の夏の宵です。お楽しみ下さい。
研究会は、40名の定員のところ76名の参加申し込みがあり、急遽会場を拡大して開催。各氏の興味溢れる話と目をみはる映像情報は、鮮明なマルチスライドとクリアな音響効果で参加者に感銘を与えたと1987年8月26日付の『VMD協会レポート』は報告しています。
祭りの追求第二弾
日本型VMDの原点と心髄を確かめます。
会場は浅草、もしかして弥生の桜・・・・。
無国籍化ではなく日本人としてアイデンティティをもつことこそ国際化への対応です。いま日本人の感性に触れ、心を捉えるVMDのあり方は関心の的です。西洋と東洋そして日本の類似と相違を考え、私たちの研究も佳境にさしかかりました。前回の「祇園祭」の好評に続き三月は下記の主題に焦点をあてます。
これまでの研究報告 片岡裕さん
東京銀座通り連合会と共に「日本のお正月」とおもてなしの心を、立体的連合的に繰り広げるようVMD協会の企画として推進。1987年12月30日の午後5時から9時まで、研究開発委員会メンバーと他の委員会のメンバーとで「銀座の正月」の取材が行われ、400枚のカラースライドが撮影されました。
1989年10月28日 銀座1丁目ミカレディ2階ホールで開催。
お正月は「日本の美意識」に改めて触れる時、その原型は平安時代にあるといわれます。
「源氏物語、枕草紙、百人一首」。今回は神作光一先生をお招きして、そこに現れた「お正月についてお話しをうかがいます。
1990年10月27日銀座1丁目ミカレディ2階ホールで50名参加のもとセッションが開催されました。 テーマは「百人一首の世界」で、東洋大学学長の神作光一先生の講演があり、協会員によるフリートーキングで開催されました。会場には、百人一首に関する貴重な古文書や複製が陳列され、立体的でビジュアルな講演となりました。(中略)第2部の「私の正月・この一枚」は、和光、サンモトヤマ、アルビオン、カネボウ、ベルブードア、VALSマーケティング研究所、ミキモト、東京ブラウス、資生堂が登場しました。
1991年11月29日 銀座1丁目ミカレディ2階ホールで89名の参加のもとセッション開催がされました。講師には高名な日本料理家の阿部弧柳先生をお招きして「日本料理」の食文化より主として伝承口伝秘伝に関わるお話しを伺いました。(中略)また別コーナーには春日若宮御祭神饌の再現と「正月の膳」のディスプレイを小峰道子さん、中部智子さん、野口良平さん、渡辺雅稔さんらが展示して関心を集めました。また松田明子さんによる手作りのお節料理が用意され、来場者のおもてなしが行われました。(中略)「銀座の年始VMD速報」として、渡辺あゆみさん(サンモトヤマ)、林裕志さん(ワシントン靴店)、青木智子さん(ミキモト)田中寛志さん(資生堂)らがスライドを映写しながらプランを語り注目されました。
和菓子を通じて伝統的日本のVMDの原型を追求するため、「和菓子の会」と銘打った分科会を中心に研究活動を1年間展開。1988年6月28日には、一つの区切りとなる成果報告のための研究会を靖国神社内神苑茶室洗心亭で開催。52名の参加のもとで開かれました。本研究会を取材した繊研新聞は、記事のなかで次の通り紹介しています。
「研究開発委員会が、作り手、送り手、受け手の3段階に分けて研究成果を発表。日本人が四季を見失いつつあると言われているなかで、和菓子は四季折々をしっかりとクリエートしていること、作り手は日本の自然をモチーフに、職人としての心意気、こだわりを持ってモノづくりを進めていること、送り手は洗練された菓子プラス周辺の演出力を持ち、また受けて側の本物志向が現在の和菓子の発展を支えていることなどが報告され、①工夫力②伝統力③心、気持ちを大切に通じ合う人間関係の3点を上げ、今の流通業界では、まさにこの3つが見失われているとまとめた。」
研究会は1989年9月30日青山ベルコモンズ11階レセプションルームで開催され、講師に栄太楼のVMDに取り組む株式会社トランスレイトの石渡智子さんを招きました。下記の文章は連絡事務局発の案内文からの抜粋です。
「栄太楼」と「VMD」。
そこには、伝統の魅力と時代の息吹があります。
初秋の青山で、石渡智子さんとの2時間です。
和菓子は、魅せてやまない美意識の凝集があります。伝統の商品と現代のマーケティング、時代に生きるマーチャンダイジングとVMD。高名な栄太楼のVMDは、私たちが注目する成功のためのヒントがあるようです。
今回は栄太楼でVMDを展開中の気鋭の人、VMDのドメインを希求している人、石渡智子さんが登場です。
好評の「和菓子を通じて日本型VMDを考える」シリーズは研究開発委員会の主催です。
この時の石渡智子さんの講演内容と質疑応答は情報委員会の田口早苗さんが、テープおこしからワープロ入力までボランティアで行い、「SESSION REPORT 」としてVMD・受信発信シリーズ③に掲載されました。その字数は400字詰原稿用紙65枚を超える詳細で膨大な内容であり、極めて貴重な記録と言えます。
名称が研究委員会となった1992年7月29日と8月21日の2回にわたって全体会議を開き、年間研究テーマを「日本の中の日本」「エコロジー時代のVMD」に決定。
1992年11月30日、「おもてなし」をキーワードに「日本型VMD」に迫るセッションを開催しました。
原風景の中から探る日本型VMD
「もてなし文化ルネッサンス」の著者、星野克美教授が鋭く分析。題して「五感のもてなし・VMD」。会員の「もてなし」プレゼンテーションもお楽しみ。
浮世絵の様式美の影響を受けて印象派を興したヨーロッパの画人達のごとく、アメリカ輸入のVMD理論に、日本人の感性を移植した新しい日本型VMDのリ・コンストラクションが今、日本のクリエーター達の新たな課題となっています。伝統文化の中に埋蔵された「文化の遺伝子」を掘り出し、現代に移植する「文化の遺伝子工学」について、記号論マーケティングの研究者がVMDに焦点を当てて分析を試みます。
1994年10月16日「エコロジー」をテーマにセッションを開催しました。