1987年に日本VMD協会が設立され、翌年の1988年から国家検定の「商品装飾展示技能検定」の支援活動を行ってきました。労働省の職業訓練局が1984年職業能力開発局 に改称後、様々な業種に適した技能検定を実施することになり、以来協会はこの商品装飾展示技能検定についての支援を協会活動の一つの核事業として担ってきました。
VMD業務において必要な創造性や感性など、目に見えないものを「技能検定」というある尺度で測ることの難しさがあり、それを問題の内容などでどの様にクリアしていくかが当時から大きな課題であったと考えられます。
協会では中央職業能力開発協会からの委嘱により、この検定に理解があり商品装飾展示の知識と技能に精通した会員を、問題作成を中心とする中央技能検定員として派遣しています。また、技能検定を実施する都道府県の職業能力開発協会からの委嘱により、評価及び審査するための技能検定委員を東京都、埼玉県、群馬県、愛知県、山形県、北海道などに派遣しています。
この技能検定試験が始まった当初は1級と2級が実施されましたが、1993年以降に3級が加わりました。それと共に関連科目のある専門学校や大学在学生の受検が可能になり、多くの学生が受検する機会を得ました。そのため関連学科のある学校の教育に携わっている協会員は、毎年積極的に受検を啓蒙、促進してきました。この検定試験は就職活動を控えた学生にとっても、在学中に国家検定の3級と2級が取得できるという大きなメリットがあります。しかし、当時はまだ採用する企業側にこの技能検定の意味や意義が浸透していなかったこともあり、合格者全員に恩恵があったわけではありません。協会は、この検定の周知徹底を図るためJAPAN SHOPを始めとするあらゆる場で広報支援活動を行ってきました。
また、検定実施の当初から受検者のために毎年検定説明会や商品装飾展示セミナーなどを協会の教育委員会メンバーを中心に開催してきました。一方、協会は、各都道府県の検定委員の審査と評価基準の標準化のために中央職業能力開発協会が開催する「全国水準調整会議」に対し、支援活動を継続してきました。
近年、時代の変化と共に、ビジュアルマーチャンダイジングの必要性が認識され、ビジュアルマーチャンダイザーが各企業内で必須の専門職となり始めたころから、次第にこの国家検定の意義も深く理解されるようになりました。その結果、現在の受検者の中には、人材教育の担当者やVMDセクションの責任者といった役職の方たちも見られるようになりました。そこで協会では一定周知したということで技能検定説明会の開催を一時期やめていましたが、やはり根気強くこの説明会を続けていく事がより幅広く多くの受検者の増加につながるということで、2014年から再開することにしました。東京都を中心に実施していますが、今ではこの説明会には地方からも参加されています。
受検者に対するフォローという点では、協会の編集委員会が、受検の際の参考書となる「VMD用語事典」及び「商品装飾展示技能検定ガイドブック」の執筆・編集を行い、高い評価を得ています。(詳しくは「VMD用語事典」及び「商品装飾展示技能検定ガイドブック」の項を参照)
一方、検定の公正さという面から協会による受検対策指導は行えないため、技能検定の意義に理解を持つ関連企業及び関連学校の協力によって勉強の場が提供されています。また受検により技能検定1級に合格した場合、協会への入会希望があれば無審査で入会できる特典もあります。
日本VMD協会では業界人のスキルアップと若年層の受検増加を目指し、この技能検定支援を継続していきます。そのためにも協会員および賛助会員に検定についての理解を深めていただくことと、支援活動への積極的な協力を期待したいと思います。
(早乙女喜栄子)